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プリンス+極狼(トリスタン)

2018年11月28日 | 松:唐唐

ツイッターでフォロワーさんに「プリンスカラ松」のリクエストをいただいたものの、中世やファンタジーの畑は開墾が進んでいませんので、無理矢理私の得意な畑にプリンスを持ってくるしかねえなと思い、映画『魔法にかけられて』メカニズムをお借りして極狼世界(単に私が極狼唐松好きだから)に、プリンスに来ていただきました。
リクエストしてくださった方がトリスタン×プリンス好きでしたので、全部合わせると『トリスタンの生まれ変わりの極狼(前世の記憶なし)と、タイムスリップしてきた王子』になります。

書いてるうちにだんだん楽しくなってきてまた風呂敷をどこまでも広げて行きそうですが、気が向いたらこの設定でまた書きます。
とりあえず今回分をお納めください。




「西暦2018年…といったか…未来ではこんな細い剣を使うんだな」
「いや、そいつぁ『日本刀』ゆうてこの国独自のもんじゃなあ。欧米や欧州じゃあ、まだ昔ながらのー…いや、今はナイフかピストルか?」
松能組 本家…つまりは日本のヤクザ、暴力団の本拠地 ― その中でも奥座敷に当たる『若頭補佐』の自室では、何ともシュールな光景が繰り広げられていた。部屋の主である『若頭補佐』唐松の目の前には、まるでファンタジーゲームか絵本の中から出てきたような『王子様』が興味深そうに日本刀を眺めている。
「ぴすとる?」
「鉄の筒ん中で火薬が爆発して鉄の弾が飛び出して来ゆう武器じゃ」
「かやく…ばくはつ…?なんだか凄いな、さすがは未来だ!!」
目をキラキラと輝かせる『王子様』に唐松は苦く笑った。
この『王子様』は、唐松たちが他の組と激しく攻防を繰り広げている最中に突如空中から落ちてきたのだ。平成の日本に似つかわしくない出で立ちは、仮にハロウィンか何かの仮装パーティーと言ったとしてもあまりに浮かれトンチキな格好だった。しかし本人は大真面目に自らを『過去の世界から来た王国の王子』だと名乗った。本人の荒唐無稽な話を要約したら…の話だが。
彼の言うことには、『王家を脅かそうと企む魔導師により時空の歪に突き落とされた』ということらしいが…
まともに聞けば聞くほど頭の痛くなってくる話で、唐松たちはすっかり参ってしまったものだった。しかしそうでもないと空中から突然現れたことに説明はつかない。とはいえとてもじゃないが唐松たちの理解の範疇を超えている。頭痛を禁じ得ない頭を押さえながらも、関わってしまった以上放置も出来ない。迷いに迷ったが、行くところもないというし、仕方なく唐松はしばらくこの『王子様』の面倒をみることにした。得体の知れない男を本家に入れていいものかとも悩んだが、松能組に害を為すつもりならもっとマシな嘘をつくだろうし、コスプレにしても演技にしても、松能組にそんな嘘を付く理由も浮かばない。
顔が似ていることもあり、他人事とも思えなかったということもある。それに……
「補佐殿は『ぴすとる』は使わないのか?」
「っと」
王子に問い掛けられ、唐松はハッとして我に返った。そして無垢な表情をこちらに向ける王子に対し、取り繕うような笑顔を一度浮かべて、王子の手から愛用の日本刀を回収する。使い込まれているそれは手に馴染んで唐松をホッとさせた。
「日本のヤクザっちゅうんは古臭いもんじゃけえの、伝統っちゅうやつじゃ」
軽く目を伏せて手の中のそれを愛おしむように微笑むと、王子もパッと表情を明るくした。
「トラディッション!わかるぞ!!王国でもそう言うのは大事だからな、さすがはトリスタンだ!」
「……………」
「あ…、その、すまない…」
つい口が滑った…そんな風な『王子様』は、唐松の瞳に当てられてすぐ申し訳なさそうに視線を逸らした。

『王子様』の言う話では、彼には元の世界に『トリスタン』という名の忠実な部下がいたらしく、そして唐松はその『トリスタン』の生まれ変わりなのだと…
しかしもちろん唐松にはそんな記憶はない。

「……ええて、気にしんさんな。それより王子サンに悪いが、今着替えを持って来させるけえ、着替えてもらえるか?『コスプレ男を囲っとる』なんて噂が立つと、こっちにも立場っちゅうもんがあるけえ、いささか困るけえの」
「あ、ああ、すまない、厄介をかけるな」
上手く話を逸らし、物腰は柔らかく唐松は立ち上がり、自然にスッと部屋を後にした。パタンと襖を閉じると、やっと顔から笑顔を消して、声も立てぬように溜息をつく。
「………」
あの『王子様』は、唐松たちが他の組と激しく攻防を繰り広げている最中に突如空中から落ちてきた。
そしてその混乱の中、敵の一人があの王子に向けて刀を振りかぶった時、思わず唐松の身体が勝手に動いた。そして彼を助けるべく立ちはだかり、敵の刃を自刃で受け、そして確かにこう叫んだのだ。
『ご無事ですか王子!?』と…
方言も抜け、自己紹介もしていなかった時点で、確かに勝手に口が動いた。唐松は指先で自らの唇に触れながら、神妙な目つきで視線を落とす。あの感覚は何だったのか…それこそ、彼が語るように自分が『トリスタンの生まれ変わり』だとすれば辻棲が合う…行くあてもないという彼を放っておけず連れて帰ってきたのは、何より『この人を守らなければ』という気持ちが働いたからだった。
…しかし、もしも仮にそうだったとしても、
「…今のわしは王子を護る騎士じゃのおて、若頭と…この松能組を護る若頭補佐じゃ」
まるで自分に言い聞かせるようにそう呟いて、唐松の屋敷の奥へと足を向けた。





引退を控えた魔導師に『最後に面白い物を見せたい』と言われ、王子は城の裏手へと付いて行った。その魔導師は先代の国王、つまり王子の祖父の代から王家に使える予言士で、王子も幼少の頃からその老人を知っていた。油断ともいえる信頼はそのためだった…
城の裏手の大きな井戸に、魔導師は何やら魔術をかけており、枯れた水面の代わりに奇妙な光が渦巻いていた。魔導士に導かれるまま王子がその渦の中を覗き込むと、観たこともない世界が映し出されていた。
魔導師はおもむろにその渦の中の一人にフォーカスを当てると、『渦の中がはるか未来の世界で、この男はトリスタンの生まれ変わりなのだ』と言った。
言われてみれば顔つきはよく似ている……しかしトリスタンの生まれ変わりの割には随分と育ちの悪そうな髪型で粗野な笑顔を浮かべる男だと王子は思った。しかし時折見せる視線の柔らかさだとかは、言われてみれば確かにトリスタンに…
そんなことを思いながら、思わず食い入るように覗いていると、急に王子は背中を押され渦の中に突き落とされた。
『次期国王のお前が消えればこの国も王族の権威も揺らぐだろう!』
渦の入り口から魔導師の禍々しい笑い声が響いた。
まさか自分の引退とともにこの国を滅ぼすつもりか?
ああ、この国を支えるべき王子たる自分がなんて油断を…
渦の奥に吸い込まれながら、後悔や自責に王子は顔を歪める。
渦の中は『異空間』と呼ぶだけあり、地上で感じるような重力を感じない…しかし緩やかに緩やかに身体は渦の奥へと吸い込まれていった。
もどかしく感じるそのスピードの中で、元居た世界の方から不意にトリスタンたちの声が聞こえた。
『王子!今この俺が助けに―っ!!』
『無駄じゃ!渦の向こうの終着点はお前の生まれ変わりが居る場所!同じ魂が二つ邂逅するのは次元に矛盾が生じてしまう!王子が二度と戻れなくなっても良いのか!?』
『…つまり、俺が行かなければ王子が戻って来られる可能性があるということだな?』
『何っ!?』
『王子!俺が必ずこちらから帰り道を開け、貴方をこの世界に呼び戻します!!それまでどうか!!ご無事で!!』
トリスタンの声に王子は思わず手を伸ばした。
たとえ昔馴染みの誰に裏切られようと、たった一人、トリスタンのことだけは信頼できる…
そんな唯一でありたった一人の騎士に腕を伸ばした瞬間、急にパンッと弾けるように目の前が白くなり、そして硬い地面に尻餅をついた。
「っ!」
鈍い痛みに顔を歪めて、打ちつけた腰をさすった。
ゆっくりと光に慣れていく瞳を開けると、目の前には大勢の黒服の男たちが怒号とともに激しい争いを繰り広げていた。
翻るいくつもの白刃、飛び散る赤い血、破裂音の数々、拳が肉を殴る音…
それは王子の知る『戦争』や『決闘』といった争いのそれよりもあまりに粗野な音の嵐だった。
気分が悪くなり思わず口を押えると、その刹那に誰かが王子に向けて細長い刃物を振りかざした。
「おんどりゃあああ!!!」
醜く雑な叫び声と殺意にサッと顔色が青くなる…その時、王子の目の前に誰かの背中が立ちはだかった。
ギキィンッ、と…聞き覚えのある音は、刃物と刃物がぶつかり合う音…
王子の視界には灰色の背広が一瞬マントのように風に揺れ、刀で敵の攻撃を防いだ騎士の背中がそこにあった。
「ご無事ですか!?王子!!」
懐かしいその声に……姿を見てもいまいち信じることが出来ずにいたはずの王子は呆然とこう呟いた。
「……ト……トリスタン……?」





トリスタンの目の前で光の渦は枯れ井戸の姿に戻った。
「くっ!!貴様!!早くさっきの渦を元に戻せ!!王子を早くこの世界に連れ戻せ!!」
トリスタンは怒りの形相で魔導士の胸ぐらをつかむ。相手が老人であることもお構いなしだ。その必死な形相に一瞬だけたじろぐものの、魔導士は意地の悪い笑みを浮かべた。
「ひっひ、誰が戻すか!わしももう老い先短い!惜しい命などあるものか!それならこの王国を道連れにしてやる!」
「くっ…!!」
決意の堅そうな…そして失うものが何もない様子の相手に、トリスタンは苦い声を上げて奥歯を噛みしめた。
どうすればいい?どうすれば王子を取り戻せる?迎えに行けない以上、ここで自分は頑張るしかない!王子を取り戻すためなら、なりふりを構っている場合ではない!幸い王子もいないことだし……
(ん…?)
パッとトリスタンは魔導士の胸ぐらを掴んでいた手を離し、その代わりにゆっくりと自分の左右の拳をパキパキと鳴らした。
「王子がこの世界に居ないのなら…王子に見られる心配がないのなら…誰に何をしてもかまわないな…」
「…何…?」
「…王子は俺の理性だと心得ろ。俺に『理性ある行動』をしてほしくなったらいつでも王子を連れ戻せ」
「ヒッ」
太陽を背にし、顔に影を落とすトリスタンの表情を見て年老いた魔導士は短い悲鳴を上げた。

それからしばらくの後、王子は無事元の世界へ帰ってきた。そして事件は人知れず解決し……その後、あの魔導士を見る者は一人としていなかった。





【魔導士】
プリンスカラマツの祖父の代から王家に使えていた魔導士。「お前も歳だしプリンスが即位する時に引退しろ」と言われ生きがいを無くし自暴自棄になり、次期国王であるプリンスをこの世から消してしまおうと考える。しかし殺人は大変そうなので別の世界に飛ばしてしまい行方不明にしてやろうと思う。要は王国が混乱して瓦解すればそれでいい。

【異次元の制約】
同じ魂が同じ空間に居てはいけない。同じ地球上に居るくらいならいいが、バッタリ会ったりお互いを認識したり顔を合わせてはいけない。そのためトリスタンとその生まれ変わりである極狼唐松は同じ次元には居られない。
映画的にすると1にあたる話ではトリスタンの活躍もあり王子は元の世界に戻って来れるが、「2」では実は生きていた魔導士が「今回は先にトリスタンを始末しておけば」と作戦を練り直してリベンジしに来てトリスタンが時空の渦に突き落とされ、その代わりに極狼唐松がプリンスたちの世界にやってくる話になると思われる。(何の話??)

【極狼唐松】
松能組 若頭補佐。前世の記憶はないから「トリスタン」と言われても困る。しかし王子がピンチになると身体が勝手に動いて王子を助けてしまう。その特性を知ってからおそ松がわざと王子に向けて壺を投げたりして唐松がすかさず助けに入るのをオモチャのように楽しんで怒られたりした。王子のことが心配で過保護になりがちだが無自覚。王子のことは少し馬鹿にしたような軽い口調で「王子サン」って呼ぶ。

【プリンスカラマツ】
平成の日本にタイムスリップしてきてしまったプリンス。最初魔導士に「あれがトリスタンの生まれ変わりだ」と姿を見せられても訝しげで半信半疑だったが、自分を助けに来る背中だとか声だとかがトリスタンなので、むしろ極狼唐松の態度を見て「トリスタンの生まれ変わりなんだなぁ」と信じた。とはいえ記憶がない異常、別人として接しないと失礼になると思い、しばらく面倒を見てもらう恩もあり経緯を込めて「補佐殿」と呼ぶが、時々間違えて「トリスタン」と呼んでしまう。トリスタンとは別の人だと思わなければと思う一方で、トリスタンは自分を護る騎士だったのに、今の極狼唐松が自分以外の「若頭」や「松能組」を第一に守ろうとする姿勢に少し切ない思いをしている。
最初は日本の「靴を脱ぐ文化」や「床(畳)に座る文化」に慣れず、箸もうまく使えず、着物にも戸惑った。



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